民族の世界地図

民族の世界地図 (文春新書)

民族の世界地図 (文春新書)

100を超える文献を参考に、9人の匿名メンバーの視点からの図説を多用した説明は、世界史と地理に疎い私にも分かりやすい内容でした。世界は広く、そして繋がっているのだ、とつくづく感じました。連綿と続く歴史とそれぞれの地域に生きる人々、密接に関連する宗教、そして紛争。が、あまりにも複雑多岐にわたり、消化するにはまだまだ時間がかかりそうです。
ロサンゼルスで平凡な主婦生活を送る中でも、中東や旧ソ連の人々と出会います。ESLのクラスでは、アルメニアの老人とアゼルバイジャン生まれの若いロシア女性が激しく議論し、イラン生れのアルメニア人があきれて同意を求めてきたこともありました。一体この人たちはどのような紆余曲折を経てここにいるのか、という疑問と、最近、美術館などで触れる夫の好きな古代地中海の遺物の背景を知ることができたらと思い、この本を手に取りました。
そういえば、以前に触れた「アルメニア大虐殺」に関する記述もありました。トルコ人によるアルメニア一掃計画(民族浄化)の結果、少なくとも100万人の死者と50万人の移住者を出したといわれているそうです。そもそも、ノアの箱舟の逸話で有名なアララト山を含む国土に18世紀末にロシアが進出、領土化し、それを後ろ盾に在トルコ領のアルメニア人が圧政からの開放を目指して立ち上がったものの返り討ちにあった、ということが10行程度触れられていました。