伽羅の香

伽羅の香 (中公文庫)

伽羅の香 (中公文庫)

夫と子どもに先立たれた明治生まれの女性が、香道に精魂を傾けた人生の物語です。
ちょうど、『香と香道』というご本も平行して読んでいるところでしたので、香道に関する部分はそれぞれが内容を補い合ってくれて好都合でした。名香蘭奢待とまではいかなくとも、いつか平安時代からの長い歴史を持ち、公家文化の流れを汲む優雅な香道を体験をしてみたいものです。
物語のほうはというと、主人公があまりにも出自にとらわれ、地に足が着いていないようにも思えて、あまり共感できずじまい。私の若さゆえでしょうか。家族に恵まれなかった女性の寂しさだけはひしひしと感じました。あとがきを読んで結末へ至った顛末を知ったわけですが、さもありなんといったところでした。