後藤田正晴と十二人の総理たち

元後藤田副総理の「お別れの会」で献花に立つ歴代総理を通して、その時々の後藤田さんの動きと公的な職務には付いていなかったけれども、彼の指示で動き回った著者のドキュメントは、中盤からページを繰るのがもどかしくなるほどの臨場感でした。特に湾岸戦争前に情報を得るために役職なし予算なしで単身ワシントンに乗り込み、見事に的確な情報を得る部分、9.11事件当時に石原慎太郎東京都知事と偶然ワシントンに居合わせた部分など、胸がドキドキしてその晩の夢見までおかしくなるほど。佐々さんというとあさま山荘事件が出てきますが、当時の私は0歳で当然のことながら何も覚えていません。本書で取り上げられているのは湾岸戦争阪神淡路大震災サリン事件、ペルー公邸占拠事件、9.11事件など、私が十代後半以降の話ですから、少しでも新聞報道、ニュースなどを通して世の中の空気を覚えている分、読みながら何度も唸りました。著者の活躍ぶりには舌を巻く一方で、現役の政治家や官僚の役割は何なのだろうか、とも考えさせられた一冊でした。