春の数えかた

春の数えかた (新潮文庫)

春の数えかた (新潮文庫)

大山崎で幼少の頃を過ごした私は、桂川の堤防ではバッタや蝶々、「天下分け目の天王山」のふもとではカブトやクワガタ、ちょっとした小川ではザリガニをとって遊んでいました。幼稚園の友達のおうちの池にはカマキリの卵が産みつけられていたり、小学校からの帰り道では田んぼで蓮華や芹を摘んだり、という自然がいっぱいの環境。芹のおひたしは美味しいんですよ。
著名な動物行動学者の著者が、蝶や虫などを通して季節を語るエッセイを読みながら、子どもの頃に親しんだ、そんな風景を思い出しました。生物たちがそれぞれの方法で積算し、季節を計っていること、鴨川の鳥柱の不思議など、どれも興味深く、また人間へのまなざしに溢れていて、安心して読めます。自然に優しく、というのは欺瞞であって、人間のロジックと自然のロジックがせめぎあい共生する「人里」を創ろう、という考え方はいいなあ、と思いました。