最近読んだ本2

○ボートの三人男
イギリス人らしいユーモア満載。アメリカ人とイギリス人では全くユーモアのセンスが違うのが、よく分かります。100年以上前の富裕階級の子弟が実際にこんな生活をしていたかどうかの真偽はともかくとして、エッセンスを感じることが出来、風景の描写の美しさに、いつか現地を訪ねてみたいという気にもさせる一冊。今なお教科書に載っているほどの物語らしいです。


2001年宇宙の旅
アーサー・C・クラークによる、映画製作との絡みが書かれている序章は、ものを作る人たちの苦労と努力を窺わせます。人類がどのようにして人類になったのか、そして、どこのように次のステップに進むのか、モノリスとは何か。生まれる前に書かれたサイエンスフィクションであるはずなのですが、少なくとも私にとっては古さを感じさせませんでした。合わせて観たDVDでは、モノリスの小ささに不満。しかし、あのラストのためにはあのくらいの大きさに留めておかないと、絵にはなりづらかったのかもしれません。極端に台詞が少ない映像なので、小説を読んでおかないと何とことやら分からなかったでしょう。月面への待合室や最後の部屋のインテリア、木星上での映像、それから音楽が格好良かったです。


細雪
ただただ優雅な小説だと思っていたら、検閲され禁止されながら、第二次世界大戦中に戦時下の状況を書いていたということを知りました。美しい阪神の自然に中上流階級の暮らしぶりや仕来り、京都への花見の様子、嵐山の描写、フランクライド建築時代の帝国ホテルなど、谷崎潤一郎が生きた時代の空気が蘇ってくるような気がしました。
ちょうど読み上げた時期に、本書に登場するレオ・シロタ氏が実在のピアニストだということを、知ることができた偶然も面白いことでした。きっかけは、昨年の文芸春秋九月号に掲載されていた、GHQ憲法草案作りに携わったB・S・ゴードンさんに関する記事でした。彼女はレオ・シロタ氏のご令嬢であり、日本国憲法14条の第一項【法の下の平等】と24条【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】の草案を書いた方だというのです。歴史は思わぬところで続いているのですね。