千家分流

千家分流

千家分流

三代宗旦とその子どもたちへ千家の茶が受け継がれる模様を描いたもの。評判どおりの面白さ、一気一晩で読みました。私が習う裏千家茶道は、宗旦が四男宗室と隠居した今日庵のことだという知識が大幅に補強されました。表さんだ武者小路さんだ裏だ、というけれども、もともとは利休そして宗旦を源流にした同じ千家のお茶なのだと改めて思います。茶道と禅は切り離せないものとして、たぶんに宗教的な断片をお点前のそこここに感じる身としては、三男宗左(表千家)が偶然にキリスト教と茶の心に共通点があることに気づき、天草四郎に向かって「四郎時貞殿!あなたは茶の湯をご存知か?狭き門とはすなわち茶室のにじり口のことだ!」と叫ぶ逸話は興味深いものでした。狭き門=にじり口という考えは、『千利休とその妻たち』では、確か利休自身が宗恩に連れられたミサでパライソへ至る狭き門から着想したと書かれていたように記憶しています。事実がどのようなものであったにせよ、違う文化に共通した思想が含まれているようで面白いものです。血の繋がりがなかったという設定の長男宗拙をはじめどこまで史実に近いのかは不明ですが、随分表千家裏千家の資料を読み込んで書かれたということです。道安風炉で知られる道安についての記述も興味深い。もうすぐ風炉の季節です。