小泉八雲集

小泉八雲集 (新潮文庫)

小泉八雲集 (新潮文庫)

怪談・奇談・日本評論などが閉じ込められた一冊を通じて流れるのは、古きよき失われた日本を、異国を覗くかのように知る感覚でした。『日本の微笑』という日本評論の、以下のくだりは見事な予言だと思います。
「・・・現在、日本の若い世代の人たちがとかく軽蔑しがちな過去の日本を、ちょうどわれわれ西洋人が古代ギリシア文明を回顧するように、いつの日にか、必ず日本が振り返って見る時があるだろう。・・・古風な忍耐と献身、昔ながらの礼儀正しさ、古い信仰のもつ深い人間的な詩情――こうしたいろんなものを想い悲しむことであろう。・・・」
日本で生まれ育った人間として、地続き感は持っているつもりですが、江戸の香りが残る明治時代、私の会ったことのない曾祖父の時代の描写は、全く違う国のようです。百年以上も前に日本に来たイギリス人の視線と、米国に住んで三年の私の視線の交差点を、時間があればもう少しまとめてみたいところです。