ナオミ・ヒラハラ二冊:『ガサガサ・ガール』、『スネークスキン・三味線』

余談ですが子達とカップケーキ作りまし

とんでもなく私のツボに入った小説でした。推理小説の主人公が、70歳台で日系アメリカ人で庭師、という何だか突拍子もない設定ながら、それがうまく機能している本当に面白い物語です。秀でた推理小説へ贈られるエドガー賞のペイパーバック部門を受賞しているのも、マイノリティでは珍しいとのことですが、日系人の生態がうかがえるニッチさ以上に、歴史小説の一面もある奥深い構成が評価の一つかも?一見冴えない主人公マス・アライのユーモア、勇気、正直さがシリーズに一定のトーンを与えているし、かつ、作者から発せられるアメリカ社会への問いかけも興味深いものです。

ガサガサ・ガール―庭師マス・アライ事件簿 (小学館文庫)

ガサガサ・ガール―庭師マス・アライ事件簿 (小学館文庫)

スネークスキン三味線―庭師マス・アライ事件簿 (小学館文庫)

スネークスキン三味線―庭師マス・アライ事件簿 (小学館文庫)

リトルトーキョーの図書館で見つけた日本語版は、表紙がちょっとコメディ調で、そのままのイメージで読み進めると面喰いますし、訳も少し雑なところが見えるとはYoくんの言ですが、それでもアメリカ社会を見る一つの視点として非常に価値があると思います。もっと世に知られるべきである、ある意味、凄惨な日系人の歴史をエンターテイメントの真綿に包んで世に出す一連の試みは、自身が日系三世であり、スタンフォード大学修士をとった後、LAのバイリンガル新聞で記者をしていた彼女ならでは、なのかもしれません。
実は作者はYoくんの友人のお姉さんです。彼が、マンザナーで講演を聞いたHank Umemotoさんが本を書くにあたって助けてもらった人、ということで探し当てたのが、Naomi Hiraharaさんで、友人と姓が同じで顔写真が良く似ている。もしや、と尋ねたら、「僕の姉さんで、一族の誇りです」ということでした。彼がそう言うのが非常に理解できる読後感です。毎年四月にLA Timesが主催しているThe Festival of Booksでのサイン会でのお目にかかりましたとき、ひとかどの人物というオーラを発しておられました。

マス・アライシリーズは今のところ五冊刊行されており、和訳されているのが今回紹介した二冊。さて残りの三冊、重い腰を上げて読めるかどうか?私はどうしても日本語の活字の方が楽なのです。